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「オーナーズシステム」の構造的欠陥であり、後にそれが現実となり混乱を身をもって体験させられる。
契約の時点で、R商法の本質を見抜いておくべきだったと要求するのは無理な話だろう。
後に提出されたオーナー名簿によると、購入者の中には、医者、弁護士のみならず、裁判官や外交官さえいたのである。
あくまで漠とした不安に止まった。
Oは、営業マンにストレートに「Rが倒産したら?」と質問している。
すると、何の跨躍もなくこう答えた。
「倒産しても物件は残る。
それを売れば、損はしないでしょう」不動産神話が日本全土を覆っていた時代である。
地価はもちろん、マンション価格も高騰を続けていた。
言われてみれば、そのとおりであると納得した。
不安というより、もう一歩進んで倒産の可能性が「ありうる」と見通していたのは、M唯Mが代表理事を務めるみなと建設事業協同組合はC棟のおよそ4割を占める66室を所有する有力オーナーである。
購入時は、C棟152室の全室を協同組合とその関係者で買い取った。
それだけの大型投資だけに、購入する前に、大手民間信用調査機関などを通じてラィベックスの経営状況を調査した。
その結果、「財務内容に問題があった」施工業者が名の通ったゼネコンであったのも、不信を打ち消す材料となった。
「昇り調子の会社だ」Kには、そう感じられた。
甘言一巧みな「勧誘」に膨らむ「夢」銀行に相談すると、融資も可能だという。
もっともその際にも、Rの財務体質に問題あり、の情報を得た。
それにもかかわらず購入したのは、「物件そのものは良かった。
Rが倒産した場合は、自社で管理していけばよい」と踏んだからだ。
Mが3代目の代表理事を務めていたみなと建設事業協同組合はオイルショック直後の不況に対応するため、東京・港区の大工、左官、鳶職業を営む中小工務店が参加して設立された。
中小企業等事業協同組合法に基づく「協同組合」で、営利法人である。
設立当初は共同受注・共同施工が主な目的だったが、参加企業の多くが手掛けていた木造建築の需要は時代とともに減少し、この頃になると、不動産仲介業、デベロッパー業への傾斜を強めていた。
バブルの恩恵は受けてはいたものの、不動産仲介業では不安定要因が強く、将来に不安を感じていた。
取引先であった戸田建設の部長を通じて「C八王子」を紹介されたのはそんな矢先利回り4・5%。
これは魅力だった。
「土地を売ったり買ったりでは、なかなか利益はでない。
(組合を)安定成長路線に乗せるためには、それよりも建物を所有している方が有利だ。
個人に例えるなら、老後の安定を考え5%、あるいは5%という高利回りを保証していて、果して企業を維持していけるか肥という疑問も覚えた。
それでも、「賃貸借契約を10年に限定し、倒産しても自己管理の道がある」と判断したのだ。
いざ現実にRが倒産してみると、「2億円の持ち出し」ぐらいでは解決しない、Mの予想をはるかに越えた事態が出現した。
1994年(平成6年)2月20日付「日本経済新聞」朝刊の一面トップは、大見出しで次のような記事を掲載している。
「政府は総合経済対策に、不特定多数の個人投資家が参加する不動産の共同投資事業について、投資家保護のための立法措置を盛り込むことを決めた。
所管官庁の建設省が「不動産共同投資事業法」(仮称)を今通常国会に提出する。
投資家保護ルールを明確にすることにより、個人の不動産投資を促進し、低迷する土地取引を活発にするのが狙いだ」「新法案は、事業者に対して禁止行為、情報開示の義務付け、開業時の規制などを明確にする。
まず、区分経理を徹底し、経営難に陥った企業が共同事業を通じて得た賃料収入を運転資金に流用することを禁止する。
「絶対もうかる」などのうたい文句で投資家にリスクを示さず勧誘する行為も禁止する」記事に言う「不特定多数の個人投資家が参加する不動産の共同事業」それは、ラィベックス商法そのものであり、新法案が定めようとした禁止行為は、Rの行為そのものである。
法案は国会を通過し、「不動産特定事業法」として成立、施行された。
96年は、すでにバブル後遺症が顕著に表れていた時期である。
景気低迷の打開に土地取引の活発化を図り、再びバブルを演出しようとする政府の狙いはともかく、新法の施行は、個人そそうの不動産投資意欲を阻喪させた一因がRの倒産にあったことを逆に示している。
R商法がいかに反社会性、不法性を有していたか。
弁護士のTは、R商法の本質を瞬時に見抜いた。
「不動産を金融商品化したものである」Tは後に展開される幾多の裁判で不法性を訴え続ける。
Rの物件販売の特徴は、所有権を小口販売した点にある。
一室まるごと販売するのではなく、室の大小に応じて幾つかの口数に分割して販売する方法だ。
「C八王子」の場合、一室3口を基本として、専有面積の広さによってはさらに小口に分割されていた。
また、Rが「C八王子」に少し遅れてオープンした外国人向け高級マンション「プレジデントヒルズ上祖師谷」では、億単位の販売価格にのぼる一室を97口にも分割していた。
購入した側の立場からいえば、一室分3口を購入すれば問題はないが、一口あるいは2口を購入した場合は、一室を複数の購入者で共有する。
オープン当初の資料ではないが、後にまとめられたオーナー名簿によると、「カレッジタウン八王子」には、そういう細区分所有の部屋が全棟で55室、所有者数にして197人。
A棟のホテルのケースでは、一室を3口に分割した「3分所有」の部屋が3室、所有者が33人(一所有者が同持分で複数所有している場合は一人としてカウント)にわたる。
共有の場合でももちろん一定割合の所有権はある。
だが、単独所有の場合とはおのずと異なる。
Rは、分譲後の権利の形態を「専有面積割合による所有権の共有」と称していた。
つまり、そういう制限のある所有権であり、法律用語ではこれを「持分」と表現している。
Tが解説する。
「「持分」は民法上の所有権の一定割合ではあるが、権利性は薄い。
だからこそ、民法も「権利」とは言わず「持分」と呼んでいる」Rは、この権利性の薄い「共有持分」をことさらに細分化して販売したのである。
問題は、それだけに止まらない。
権利性が薄いとはいえ「共有持分」は所有権の一つであるのに変わりはない。
所有権なら当然民法の定める「所有権」の基本つまり。
まったく自由意思で自分で使用したり賃貸したり(使用・収益)、転売したり壊したり(処分)する権利をもっている。
また物権として強い効力も認められている。
所有物が奪われたり、使用を妨害されたりした場合は、取り戻し(返還請求権)、排除する(妨害排除請求権)権利もある。
Rは、この所有権の基本さえ、侵害していたといえるのだ。
「C八王子」は一室3口が基本であった。
「プレジデントヒルズ上祖師谷」の一室。
口ほどではないにしても、購入したオーナーたちは広く全国に散逸し、互いに見知らぬ他人である。
北海道と9州のオーナーが一室を共有するケースだってありえた。
一般的に「共有持分」というのは、相続でやむをえず共有になるとか、あるいは兄弟で買った場合とか、そういう類で生じるもの。
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